さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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賃貸借契約のルールが変わった? 民法改正のポイント(2)

2020年5月7日(木)、弊社は4月29日(水)から5月6日(水)までゴールデンウィークとして8連休とさせていただきました。通常年の連休中は、一般家庭向けの所謂「実需」向けの現地内覧のご案内や打ち合わせが多くなるため、事務所は一応お休みとしてもアポイントはそこそこ入っているものなのですが、今年はのんびりと過ごさせて頂きました。郵便物の発送や振込作業等月初のルーティン業務さえなければ7-8日も休んで土日を迎え12連休としても多勢に影響はない感じです。まあ札幌市の緊急事態宣言が解除されない限りは在宅勤務とする方針ですし、休暇中も同業者や事業・投資系のお客様とは連絡取り合っていましたから、休暇中も連休明けもたいして変わらないといえば変わらないのですが。

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郵便局に行く途中 小学校前の桜並木 児童の声だけが聞こえません

<賃貸借に関する民法改正のポイント>

今回は、前回のコラムに引き続き、4月1日に施行された民法改正について、不動産の賃貸借契約に関するポイントを、ご説明しましょう。ポイントは、大きく分けて3つです。

1.賃貸借継続中のルール改正

2.賃貸借終了時のルール改正

3.賃貸借契約から生じる債務の保証に関するルール改正

それぞれ、実務上わかりずらかったり、問題になりやすかったりして、紛争の原因となっていた点を改正しています。不動産会社を扱うものとしては、どのように改正されたのかしっかりと理解しておく必要があります。ひとつずつ簡単にまとめてみましょう。

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1.賃貸借継続中のルール改正について

①賃借物の「修繕」に関する要件が見直しされました。賃借物はあくまで貸主の所有物ですから、壊れたり修理が必要な状態になったとしても、基本的に、借主が勝手に修繕することはできません。従来の民法では、どのような場合に借主が修繕することができるかは規定されていませんでした。改正後の民法では、以下の場合には借主が修繕を実施することができると定められ、その責任を追及されることは無くなりました。

・借主が修繕が必要なことを貸主に通知した時もしくは貸主がそれを知った時から、相当な期間内に修繕を実施しない時

・急迫の事情がある時

②賃貸借契約が結ばれている不動産が譲渡された場合に、誰が貸主になるのか、新しい所有者は賃貸借契約を継承するのかどうかが明確になりました。賃貸人の地位は、原則として不動産の譲受人(新しい所有者)に移転すると規定されたのです。また、新しい所有者が、借主に賃貸料を請求するためには当該不動産の所有権移転登記を必要とすると規定されています。

2.賃貸借終了時のルール改正について

賃貸借終了時の借主の原状回復義務と敷金の取り扱いについては、従来から多くの紛争のタネになっていました。今回の民法改正ではかなりはっきり明記することでそうした紛争を防ぐ目的があるといえます。

原状回復義務収去義務等を明記しています。賃貸借契約が終了した場合に借主は賃借物をもとの状態(原状)に戻してさせ返還する必要があります。これを原状回復義務といいます。収去義務とは賃借物に付属されたものを賃貸借終了時に撤去して返還する義務のことをいいます。従来から通常損耗(通常の使用によって生じた損耗)や経年劣化はこうした原状回復義務等の範囲に含まれないと解釈されていましたが、これが今回の改正で明文化されました。

敷金に関するルールも明記されました。敷金は「いかなる名目によるかを問わず」 「金銭の給付を目的と する債務を担保する目的で」,「賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義しました。 賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点敷金返還債務が発生,その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除 した残額であることなどのルールを明確化しています。

3.債務の保証に関するルールの改正について

極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効と するというルールが新たに設けられました。「根保証契約」とは,将来発生する不特定の債務について保証する契約をいいます 。不動産の賃貸契約では、家賃や原状回復義務等の債務について保証人を立てなければならないとする場合が多く、その金額が保証人の想定外に大きくなる可能性がありました。今回の改正では,個人が保証人となる場合は、支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」明瞭に定め書面に記載しなければ,保証契約は無 効となります。

保証に関しては、法務省のホームページに詳しいパンフレットがありますのでご参照ください。

http://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf

賃貸契約の保証人を親族や友人にお願いしたり引き受けたりする場合に、想像以上の負担がかかるかもしれないと躊躇することも多いと思います。今回の改正で保証の極度額を明記することになったということは、負担の上限額を定めるようになったということです。保証人のリスクが限定的になり流動性が増すということは、貸主にとっても借主にとっても喜ばしい方向性だといえるでしょう。

2回にわたり、不動産取引という観点から民法改正のポイントをまとめてみました。民法改正の説明はこれで一応終わりとします。次回以降どこかのタイミングで、実務編と称して、重要事項説明書や売買契約書・賃貸借契約書について、民法改正に伴いどのように改訂していったか、という点をご説明できたらと思います。

                                 以上