さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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アフターコロナ時代の不動産取引・・・IT重要事項説明

5月11日(月)、いよいよ、長かった連休によってボケた頭もお仕事モードに戻さなければいけない日常が始まります。札幌の新規感染者数も5月7日から9人、4人、2人、9人と4日連続で一桁となっています。このまま落ち着いてくれるといいのですが、まだまだ予断は許されません。弊社も依然としてテレワークを続けている状況です。

今朝の札幌は青空が広がりなかなか爽やかな天気だったものですから、自宅の2階のベランダに布団を干しました。ところが昼前には曇天に変わり雨が降る有様、慌てて布団を取り込みました。通常勤務であったら、ずぶぬれになった掛布団の前で途方に暮れたことでしょう。今のところテレワークによるメリットの第一位は布団を濡らさないで良かったことですね。

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自宅ベランダからの本日の空模様 どんより

テレワークが普及していくことで、不動産業界の仕事の仕組みも、変化を余儀なくされます。従来から開発・利用を検討されていたVR(ヴァーチャル・リアリテイ)内覧やIT重要事項説明など、新しい技術を利用した変化に加速度がついていくことが予測されます。

同じようなことを考える人はいるもので、こんなテーマでコラムを書き始めようと思っていたら、本日(5/11)の楽街新聞のメルマガはこんな記事を紹介していました。

www.rakumachi.jp

まあ、社会の興味をとらえる筆者の感覚は楽街編集部なみである、と前向きにとらえて、パクリ記事といわれないように注意しながら書き進めていくことにします。

 

<IT重要事項説明の概要>

IT重要事項説明とは

不動産会社は、不動産取引の公正さを維持しトラブルを未然に防ぐために、宅地建物取引業法(以下宅建業法」といいます)によって、不動産の売買や賃貸の取引の契約の代理・仲介をする場合に、買主や借主に取引にかかわる一定の重要な事項を契約の事前に説明しなければならない、と定められています。これを「重要事項説明」といいます。

重要事項説明は、不動産会社の重要な業務の一つであり、宅地建物取引士という国家資格者の専権事項となっています。宅建業法では、「宅地建物取引士」が「宅地建物取引士証を買主もしくは借主に提示して確認」させた上で説明し、宅建業法で定められた事項を記載した書面宅建士の記名押印のうえ交付する義務があるとしています。この書面を「重要事項説明書」といいます。

IT重要事項説明(以下「IT重説」という)とは、従来、宅地建物取引士が買主もしくは借主に実際に対面して説明しなければならなかった重要事項説明を、TV会議等のITを活用して実施することです。国土交通省が定める宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」により、IT重説について対面で行うものと同様に取り扱うと規定されています。

賃貸については、すでに社会実験を経て2019年9月から本格運用が開始されました。また、売買については、法人間の売買は2015年から、個人間の売買も含めて2019年10月から59の不動産会社を傘下企業として約1年間の社会実験を開始しています。

◆IT重説のメリット

IT重説のメリットは以下の通りです。

・移動時間や費用のコストを削減できる(遠隔地への移動による費用・コストを低減)

・日程調整を容易にする(移動が無い分、契約当事者や宅地建物取引士の調整が容易)

・自宅等リラックスした環境で説明が聞ける

・本人が外出できない場合でも代理人を立てずに実施できる     

このようなメリットがあるのなら、すべてIT重説にしていけばよい、という意見もあるかと思いますが、IT重説が成立するには条件があります。

◆IT重説の成立要件

宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、IT重説について以下のすべての事項を満たした場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱うこととすると定められています。

①図面等映像や音声を視認・聴取することが十分に可能双方向でやり取りできる環境であること

②宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書等をあらかじめ送付していること(PDF等の電子書類は不可

映像および音声の状況、説明を受ける者が重要事項説明書等を確認しながら説明を受けられる状態にあることを、宅地建物取引士IT重説の開始前に確認すること

④宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示し、画面上で視認できたことを確認すること

◆IT重説で求められるIT環境

IT重説では、映像および音声を視聴する機能が双方向で十分に発揮されなければなりません。宅地建物取引士の説明が説明を受ける者に確実伝わること、説明を受けるものが宅地建物取引士にすぐに質問や確認ができなければならないからです。視認や聴取に不都合があった場合は、宅地建物取引士は、直ちに説明を中断し、不都合が解消されたのちに説明を再開すると定められています。そのため、IT環境には十分配慮されていなければなりません。以下の図は国土交通省のホームページからの抜粋です。ご参照ください。

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最近のノートパソコンは、マイクやカメラは内臓されているものが多いようです。また、今回のコロナ対応によるテレワーク推進によりご自宅でSkypeやZoomを利用することも増えていますから、以前に比べると、IT環境は充実しているかもしれませんね。まあヘッドセットくらいあると、見た目はかっこよいかもしれません。マイクは有ったほうが先方が聞き取りやすいようです。私は、Bluetoothのワイヤレスの方が良いかとも思ったのですが、結局両耳で聞ける普通のプラグインタイプで一番安いのを買いました。 

  

<IT重説から書面の電子交付へ 賃貸は既に社会実験実施>

 IT重要事項説明にとどまらず、重要事項説明書や契約書といった不動産会社が交付を義務付けられている書面についても、デジタル化(PDF化)を進める方針となっています。賃貸については、2019年10月~12月まで社会実験が行われました。電子交付の流れは以下の通りです。

①不動産会社がデジタル書面を作成

②ファイルを暗号化し契約者に送信

③契約者が暗号化された書面を受領

電子証明書による認証

社会実験はその後のアンケートによると問題は報告されていません。印鑑を押す必要がなくなる時代が到来するのは間もなくです。

 

<売買はIT重説の社会実験中>

売買は、賃貸に比べて①金額が大きい、②説明資料も膨大、③関わる人数も多い、など問題が多いので、より慎重に作業・検討が進められており、法人間の売買は2015年から個人の売買については2019年10月からIT重説の社会実験を進めている段階です。

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賃貸よりも売買の方が説明内容が多く複雑なため、IT重説の前に、対面ではなくIT重説であることの買主売主双方からの同意取り付けや、双方のIT環境の確認、重要事項説明書等の事前送付(PDF化は現時点では認められていません)を確実に実施することが求められています。

またIT重説中は、録画・録音を義務付けています。これは現在は社会実験であり検証が必要だからです。 

 さらに、取引終了後には実施報告・アンケート回収が義務付けられています。

IT重説が一般に売買でも導入されるのは、社会実験が終了する本年(2020年)10月以降となりますが、現時点では特段問題があるという報告はありません。しかし、書面の電子交付に至るにはさらに社会実験が必要になることが予想されます。

 

<コロナ禍が加速するデジタル化>

三密を避け、ソーシャルディスタンスを確保する動きは、不動産業界でも数多くみられます。大手を中心としてテレワークが半ば一般化しており、来店・接客しての内覧や相談も感染予防のために自粛する状況です。そのため、VR内覧やZOOMによる相談という新しい仕事のスタイルが求められています。こうした動きは下記のように新聞記事などでも報じられ、ますます加速していくことになるでしょう。しばらく停滞していた「不動産Tech」の時代がやっと訪れるのかもしれません。

www.nikkei.com