【待ってても、コロナじゃ、さっぽろの不動産は下がりませんから!】
緊急事態宣言解除(5月25日)から2回目の週末です。札幌でも、駅前や4丁目界隈のデパートや、地下街・狸小路の商店街が営業を再開し、人なみが戻り始めています。すすきのお店も、「コロナ対策もばっちりですから、しばらくぶりに顔を拝見させてください」とのあいさつメールが出不精のわたくしの所にもちらほら舞い込み始めました。在宅勤務をしていても、登下校の子供たちの声が、日常への回帰を喜ぶようにこだましています。
一方で、東京では「東京アラート」発令中にホストクラブで12人の新規感染、札幌でも感染経路不明者の10%以上が昼カラオケに来店歴があるなど、感染拡大にも生活様式や行動パターンが大きな影響を与えることが明らかになりつつあります。
せっかく戻りつつある日常を手放さないように、最低限の注意を身にしみこませる必要があると感じる今日この頃です。
<不動産はこれから下がるに違いない?>
先日、同業の方と情報交換していると、「不動産、下がると思うから様子見するってお客様、多いよね」という話題になりました。
「週刊誌とかネットでそういうこと書いている記事とか、自称専門家とか多いしね」
「下がったら買いたいんだけどねっていう投資家や実需(実際に住む家を買いたいというお客様)も多いなあ」
「でも、ほんとのところ、どう思います?」
「え、いや下がる気配無いよね」
「3月~4月くらいまでは、これはもしかするとかなりやばい、
暴落かとも思いましたけど」
「景気という意味では、一部の業種・会社はかなり厳しいよね。
だけど、不動産への影響は比較的小さいかな。」
「投げ売り物件も目立たないですね、もっと現金化の流れが加速するかと思ったけど」
「あっても、個別の話って感じで、全体の市況感に影響するような感じじゃないなあ」
「買いたいって話は多いですもんね、銀行も融資してくれるって話だし」
「下がったら買う、ってね(笑)」
「下がんないね、持ちこたえちゃった感がある」
「下がるっていう人多いけどね」
「ネットの影響でかいですよ」
「下がって欲しいなっていう願望かポジション・トークでしょ?」
「下がってから買いたいって、ポジション・トークというよりハゲタカ・トークですね」
「下がってから買いたいっていう人は、大概買い時逃しますよね」
「考えるな、買え!」
「名言!」
これ、本日6月7日時点の札幌の地場不動産屋さんのリアルな会話です。大体私の市況感と一致してます。感覚的に、正しいと確信していますが、少し補足説明してみます。
<マクロで見ると金融市場は傷みが少なく、復旧は早そう>
コロナによる経済への打撃は、2008年のリーマンショックと比較されます。リーマンショックは、米国のサブプライムローンの破綻から金融機関への信用不安が全世界的に拡大し、経済に大打撃を与えた出来事です。当時の首都圏の新築マンション業界は、バブル崩壊後の土地を仕入れて建設・販売をする新興のマンションデベロッパーが乱立しており、メジャーセブンといわれる大手デベロッパーの販売比率が20%台と低い時代でした。そうした新興の業者は、金融機関からの融資が厳しくなったことと販売不振のダブルパンチで急速に資金繰りが悪化し、新築マンションの値下げや投げ売りが頻発し、マンションデベロッパーの経営破綻も相次ぐ事態となりました。
しかし、今回のコロナショックでは、実体経済、特に旅客・飲食・宿泊に代表される業界が直接に需要減に直面して大打撃を受けている一方で、金融機関に大きな損傷が無いことが特徴です。そのため、全世界的に、国や公共団体による直接支援策や金融支援策が大規模にしかも広範囲に行われています。日本でも100兆円を超える対策が既に決定していることから、金融市場では既に復興の兆しが見え始めています。
日経平均株価は、1月20日には¥24,083円であったものが、3月19日には¥16,552円と30%以上も暴落しました。しかし直近の6月5日の終値は、¥22,863円と、ほぼ値下がり前と同水準、95%まで値を戻しています。
不動産市場の先行指標といわれる東証REIT指標も同様の値動きをしています。2255.72まで上昇していた東証REIT指数は、3月19日には株式市場同様に1138.04にまで暴落します。しかし6月5日現在では、1719.57と値を戻してきています。今後も、金融資金が潤沢であることから、値下がりよりも値を戻す、とみる方が順当だといえるでしょう。
銘柄別にみると、物流施設を運用する銘柄は既に100%を超える値上がりを見せています。これはネット販売などの在宅向け無店舗販売により物流基地需要が増していることを反映しているといわれています。
その次に値上がりしているのが、住居銘柄です。住居需要に大きな変化ないと市場が見ていることの表れでしょう。
オフィス銘柄は評価が分かれるところです。在宅勤務・テレワークが今後の働き方の主流になるという見方と、交通の便の良い場所への需要は変わらないとみる見方、三密を避けるためにむしろ一人当たりの必要面積は増えるという見方の三様です。
ホテル銘柄・商業施設銘柄は、評価がなかなか上がってきていません。一番需要の回復が遅い不動産だとみられている、というのが市場の評価といえるでしょう。
新築マンション市場も、売れ行き自体は回復までゆっくりと時間がかかるでしょうが、特に首都圏では、大きく値を崩すことは無いとみられています。理由としては、
①販売会社は、直近の仕入れ価格は高く、調達金利は安いため、値引き販売よりは、販売期間の延長を目指すこと、
②政府の企業向け支援策や金融機関の支援もリーマンショック時に比べて手厚いこと
③特に首都圏はメジャー7といわれる大手デベロッパーだけで45%近い販売シェアとなっており、リーマンショック時に比べ、財務体質が格段に是正されていること
REITは実際の不動産の市場の先行指標として語られています。しかし、実際の不動産の動向と必ずしも直接リンクするものでもありません。実際の不動産市場では物件を「空売り」するというポジションは基本的にとれません。売れないという評価を市場がしたところで、投資家はせいぜい「買わない」という選択肢しか取れないのです。「売れない」のです。金融市場に潤沢に資金がある場合に不動産に資金が向かうとすれば、「買う」という選択肢以外ありえません。だからこそ金融市場が潤沢かつ低金利であれば不動産は必然的に上がることになります。
<さっぽろの不動産は下がらない!>
マクロ的にみると、今回のコロナショックでは、金融が傷んでないので不動産の価格はあまり下がらないのではないか、という見立てをご説明しました。
では、札幌に限ってみるとどうでしょうか?私は、「下がる理由ないよ」と思っています。そもそもほとんど上がってないし。
(1)札幌はまだまだ地価上昇余地がある
上記のグラフは、毎年3月下旬に発表される札幌の公示価格の推移を昭和58年の数値を100として前年比累計で示したものです。1月1日の実勢価格を評価して国土交通省が発表するのですが、平成3年が札幌市は住宅地も商業地もピークとなっています。そこからバブル崩壊とともに下がり続けて、ちょっと持ち直したかと思えばリーマンショックでまた下落し、平成25年から7年連続して上昇しています。しかし、上昇幅は37年前に比べても約2割程度しか上昇しておらず、バブル期のピークと比すると住宅地で約50%、商業地では約30%程度までしか上昇していないことがわかります。札幌はコロナショック前でも、まだまだ土地が高くなっていたとは言えない状況だったのです。
(2)需要はまだまだある
上のグラフは、札幌市と中央区の人口推移です。札幌市は1987年から、人口が一貫して伸びている北海道唯一の都市です。直近(2020年5月1日現在)の人口は1,962,374人、中央区もバブル期より土地が高騰したため一時人口は減少しましたが、1995年から都心部の再開発が進んだこともあり増加に転じ、現在は239,337人と右肩上がりを続けています。リーマンショック後にも人口増加は勢いを止めることはありませんでした。
高齢化の波は押し寄せてはいますが、たとえ北海道全体が高齢化・少子化という波にあらがえないとしても、札幌市は、北海道の経済・文化・教育・娯楽の中心であることは疑いなく、住宅需要も堅調に推移することが予想されます。
(3)支援策の規模の大きさ
コロナショックに対する公的支援金の規模は、本当に困窮している産業や個人にとっては微々たるものという想いはあると思われます。しかし、地方都市である札幌にとっては、経済的にかなり大きな金額であって、不動産市場にとっては、大きな余力を生む可能性すらある規模だといえます。単純に経済の縮小を招くだけとはいえません。
札幌市の本年度(2020年度)の予算は、1兆6700億円です。それに対していわゆるアベノ10万円給付である特別定額給付金は、10万円×200万人=2,000億円です。札幌市の年間予算の11.97%、約1割強の金額が、特別定額給付金だけで6月中に市場に注入されるわけです。もちろんそのほかに、企業や個人の生活のために融資や助成金の給付がなされることになります。全体的な経済規模は、通常月よりも一時的には大きくなる可能性すらあります。
住居やテナントの賃貸料に対する公的支援策が現実化する見込みであることも不動産にとってはプラスの側面です。当初は、賃借人の解雇やテナントの休廃業、採算悪化により、賃貸料の延滞や不払いが数多くなり、減額請求や解約が増えて不動産賃貸業の不採算を招く懸念がかなり高くなっていました。しかし、家賃の負担が社会問題したことで、現在では、コロナによる影響による延滞や減額については、公的保証・公的支援が行われる可能性が高くなっています。したがって不動産の資産価値・利回りが減少するリスクも小さくなっています。
(4)のど元過ぎれば熱さを忘れる
札幌市の人口は、約200万人です。それに対し、札幌市の感染者数は現時点(2020年6月7日)の累計でも695人、0.03%に過ぎません。死者数に至っては47人、0.00235%です。犠牲になられた方には申し訳ありませんが、その程度の犠牲では、本当に生活様式や企業の働き方が変革されていくとは到底思えません。
マスクの着用の習慣化、企業での飲み会の減少、大人数宴会の減少、週に2回程度の選択的テレワーク、オフィスの一人当たり面積・距離の拡大など、一部が改良され根付いていく程度の変革は当然あるでしょう。しかし、住まいやオフィスの需要や人気に大きな変動や影響を与える変化が急激に訪れるとは思いません。日常へ戻る喜びを享受する過程で、うやむやになることの方が多いでしょう。
東日本大震災の時には、西日本への本社機能分散論などがまことしやかに語られました。実際に外資系企業などは実施した企業もありました。テレビ会議機能を導入した企業も沢山ありました。サテライトオフィスも制度導入されましたよね。結果は9年間でほぼ絶滅していますよね、その制度。今回も大きな流れは結果的にその程度のものに収まると思っています。
むしろ、行き過ぎたソーシャル・デイスタンスの反動から、人と人との結びつきを重視するムーブメントが、ファッションとして薄っぺらく起こりうる、とさえ予測しています。
以上の点から、少なくとも札幌の不動産は当面下がることは無いと考えます。
だから大事なことなのでもう一度言います。
「待ってても下がらないから。考えるな、買え」