さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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久々に露骨な「囲い込み」に思わず苦笑・・・業界こぼれ話

先日、1ルームマンションの売買の決済がありました。弊社は買主に物件をご紹介した、いわゆる「客付」という立場です。売主側には専属専任媒介契約を結んだという「元付」の会社がいました。この会社は、賃貸の仲介を主要な事業として全国にフランチャイズ・チェーンを展開する有名な会社です。ある「キーワード」で全国的に話題になった会社のようですが、詳しくは知りません(笑)。仮にAP社としておきましょう。今回のブログは、このAP社に、当初露骨な「囲い込み」をされるところでした、というお話です。

 まあ、結果的には無事に取引が済んだので恨みっこなしですし、弊社のような零細業者に対しても、近頃はコンプライアンスの問題もあり露骨な宅建業法違反はしてこない会社が多いので、あまり事を荒立てるつもりはありません。しかし、お客様にご迷惑をかけてはいけない、自分たちはけしてそのような自社の利益本位のような真似はしないぞという自戒を込めて、しっかり晒させて頂こうと思います。

子どもたちに恥ずかしくない、真っ当な不動産業界にしていきたいものですね。

(美人ちゃんをアイキャッチに起用し続けても問題ない・・・よね・・・)

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甥っ子の娘ちゃんに恥じない不動産業界を目指します。

 

<両手取引と片手取引  売主と買主双方と仲介契約も可能?>

「囲い込み」とはなんぞや、ということを理解して頂くには、まず不動産屋さんの仲介手数料の仕組みを知っていただく必要があります。順を追って説明していきましょう。

不動産屋は、宅地建物取引業法宅建業法)に則って不動産取引をしなければいけません。不動産屋は、不動産の売買や賃貸を物件を紹介して条件を整えて契約を締結させる業務を行います。宅建業法では、こうした業務を「媒介」といい、その報酬を「媒介報酬」といいます。一般的に仲介手数料といわれるのは、この媒介報酬のことです。

媒介報酬は、媒介を依頼した依頼主から不動産屋に支払われます。業界用語で売買の場合は、売主から売却の媒介を依頼された不動産屋を「元付」といい、買主から購入の媒介を依頼された場合は「客付」と言い表します。不動産屋は媒介の依頼を受けると依頼主と媒介契約を結び宅建業法で定められた事項を明記した契約書交付しなければなりません。これを「媒介契約書」といいます。媒介報酬も明記しなければならない項目の一つです。

媒介契約は、売主と買主の双方と締結することができます。これを「両手取引」といいます。これが「囲い込み」を説明するためには重要なポイントです。民法では利益相反の禁止という原則から売主と買主の双方を代理するような取引(双方代理)は禁止されていますが、宅建業法上両手取引は認められています。これに対して、売主もしくは買主のどちらか一方とだけ媒介契約を結ぶことを「片手取引」といいます。

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<仲介手数料は上限の規定あり!>

もう一つの重要なポイントは、「仲介手数料は、成功報酬であり、上限の規定がある」ということです。宅建業法で、媒介は契約を成立させることであり、その報酬契約が成立してはじめて支払われます。いわゆる成功報酬なんですね。また、媒介報酬は国土交通大臣の定める報酬を超えて受けてはならない、と定められています。具体的には売買の価額に応じて以下の料率が定められています。

 

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この上限額は、売買価額が400万円以上の場合の簡易式で算出されます。
仲介手数料上限額=売買価額×3%+6万円+消費税相当額

 

ここで重要なことは、この上限額は、片方の依頼主からもらえる上限額だという事です。片手取引の場合は、依頼主が売主であろうが買主であろうが仲介手数料はこの上限額を超えることは法律で禁じられています。しかし、両手取引の場合は、売主・買主の双方からそれぞれ仲介手数料の上限額をもらうことが可能となります。

 

<「囲い込み」とは?その功罪>

不動産屋にとっては、収益の源である仲介手数料ですが、一つの取引では上限額が決まっています。そのため売上を向上させるには、成約数を増やす、売買価格の高い物件を専門に扱う、などの戦略がとられます。そしてもう一つ、「両手取引」を増やすということが、多くの不動産会社で志向されてきているのは、まぎれもない事実です。売買の仲介手数料を増やすには、契約を成立させるしかありませんが、両手取引であれば片手取引と比較して2倍の手数料を得ることが可能だからです。不動産会社が営利団体である以上、両手取引を志向して収益向上を目指すこと自体は問題ありません。売主のために買主を探したり、買主の希望に合った物件を見つけようとすることは、媒介業務の重要な要件であり、そのために努力した結果、速やかに両手取引を達成できるのであれば、不動産会社にとっても依頼主にとっても、むしろ理想的なビジネスモデルだといえるでしょう。

しかし、不動産会社の利益のみを追求するために不当に両手取引を達成しようとする手法が「囲い込み」です。媒介契約を結んだ売却物件は、本来広く買主を探す方策を尽くさなければいけません。売主の希望条件にできるだけ近い条件で購入してもらえる買主を探し売買契約の合意をもたらすことが媒介契約の目的です。

しかしながら、囲い込みとは、両手取引とするために、こうした売却物件の情報を非公開とし、他の不動産屋の問い合わせには答えず、自分たちの顧客という狭い範囲だけに売り込もうとする手法です。宅建業者専用の公式物件情報登録・検索サイトであるレインズや一般のポータルサイトには登録せず、仮に登録しても他の業者からの問い合わせには「他業者お断り」「会員のみ公開」「未公開物件」「もう売れました」などと答えようとしません。こうした行為が続けば、買主にとっても広く購入物件を探す方法が限られてしまうことにもなりますし、売主にとっても実際には販売できる先があったにも関わらずその機会を逸してしまうことになってしまいます。これでは公正な不動産市場が形成されるとはいえません。

 

<囲い込みの防止策の数々>

国土交通省もそうした囲い込みの弊害対策として、規制を厳しくする方向で対応してきています。

まず、媒介契約には、依頼主が他の不動産屋に媒介を並列して依頼できる一般媒介契約と、依頼できない専任、専属専任3種類の媒介契約があります。専任、専属専任の契約をした不動産屋は元付として仲介手数料が成約時に確定することになります。したがって囲い込みを規制するために客付に関しては広く募集することを義務付けています。レインズに物件を登録すること、募集中なのか申込有りなのか成約済なのかをレインズに登録すること、登録した物件情報を依頼主が確認できること、販売活動のレポートを定期的に提出することなどが、それに当たります。これだけの法規制があることが、囲い込みが常習化している業界の現実を表しているといえるでしょう。

 

<AP社の「囲い込み」、許せませんよね>

さて、今回の「囲い込み」被害です。買主の依頼条件を確認した弊社では、レインズには該当する物件がなく、たまたま某ポータルサイトにAP社の出していた物件情報に興味を持ち、顧客への物件紹介が可能か、電話で問い合わせをしました。すると、先方の担当者が言ったセリフが、「本物件は、売主から専属専任契約で媒介を頂いていますから他社にはご紹介できません」。

二重の意味で「はあ?」

こいつ、絶対、宅建(宅地建物取引士資格)持ってないなと思いました。

専属専任媒介契約をしているから、他社に紹介できないというのはまったく理由になりません。むしろ客付を広く当たる義務があるくらいです。また物件情報の掲載日をみると10日くらい前でした。専属専任媒介契約の場合、契約後営業日5日以内にレインズには必ず登録しなきゃいけない規定があるのです。これもできていないという事です。そうした規定を自ら破っているということは、堂々と「囲い込み」をやってます!と公言しているようなものです。

たまたま、このお店の店長を以前から知っていたので電話を替わってもらいました。

「ちょっと説明がストライクゾーン外れすぎててやばいよ。下手な業者なら通報されても仕方がないよ、あれなら。なに?ヘヤッシュの件で会社の予算の締め付けが厳しいの?うちで良かったじゃん、あんな説明してもめたら大変だったね。

買主、現金決済だから心配しないで大丈夫、大丈夫、話進めさせてもらうね。今回は重説と契約書作成してくれればいいよ。あ、マンションだから重要事項調査報告書、忘れないで頂戴。費用(5000円位)もそちら持ちでお願いね。安いもんでしょ(笑)」

 

追記

Twitterでこのブログを掲載したところ、「リアル『正直不動産』みたいだね」という感想を頂きました。

いや、あそこまで正直にはさすがにできません・・・。