さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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不景気リスクが持ち家志向を後押し? 札幌中古住宅市場 【レインズ 10月月例速報】

このあいだ、「すっかり秋の彩り」とか言っていたのに、札幌の朝晩の気温はすっかり零下です。初雪も降り、気づけば、スーパーでは店頭の主役の座が葡萄や柿であったものをミカンに譲る、そんな季節になってしまいました。

 

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写真はイメージです

札幌では、今年3度目のコロナ感染の波が話題となっています。11月12日には過去最多の160人以上の感染者が報告され、すすきの地域での酒類販売や接待を伴う店舗への営業時間短縮要請も11月7日から実施されることになりました。

www.city.sapporo.jp

サービス産業の就業比率が高い札幌においては、Go to トラベル や Go to Eat などの経済施策の実施により、やっと宿泊業や飲食業などにも活気が戻り始めていただけに、経済への影響は大きく残念な状況となっています。そんな中、中古住宅市場も冷え込み下落するのではという懸念(期待)が根強いのですが、そうした兆しは10月のレインズ速報からは見られるのでしょうか。


<レインズ 10月月例速報発表>

11月10日に、レインズの10月月例速報が発表になりました。毎月10日前後に発表となっている中古住宅市場の成約実績レポートです。ここは毎月決まり文句となっていますので、「分かってるよ、こんなこと」という熱心な読者は、読み飛ばしても結構です。

 「レインズ(REINS)」とは国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。レインズについての説明は、下記リンクの過去記事に少し詳しく紹介していますので、チェックしてみてください。

 

rontai87016.hatenablog.com

レインズには様々な機能がありますが、「月例速報マーケットウオッチ」では、中古住宅販売について、毎月当該月の翌月中に月例速報が発表されます。首都圏のデータが主なのですが、札幌市についても中古マンションおよび中古戸建の成約件数、成約価格などについてレポートされます。オフィシャルな札幌市の不動産の概況レポートというのはなかなかありませんので、毎月発表される都度このブログでもご紹介しています。下記リンクはレインズの公式ホームページの10月月例速報です。

http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202010_summary.pdf

 

<さっぽろは、マンションも戸建ても価格が上昇!>

 札幌の中古マンションの成約件数は、10月は252件、前年比では+18件、前月比では∔53件と大きく数を増やしています。前年比で増加している一因としては、昨年10月に消費税が8%から10%に増税された、という要因も大きいと思われます。昨年は成約数が鈍化し、今年は通常の伸長ペースに戻ったともいえるのかもしれません。

 

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価格については、成約㎡単価、成約価格ともに前年同月と比較すると上昇しています。前年度の単純平均と比較しても、成約㎡単価、成約価格で高くなっています。中古マンション価格の上昇トレンドは継続中にあるといっても良いでしょう。

中古戸建てについては前年同期比では3.6%減となっています。前年110件ですから▲4件という事です。札幌は、ほぼ100件の成約数が毎月報告されています。サンプル数が少ないため、個別要因が大きく平均値に影響しますので、傾向を語るには注意が必要です。

価格は、2106万円と前年同月を+68万円と上回ります。昨年の単純平均からは137万円上回っています。戸建て価格の上昇傾向も継続中と言ってよいでしょう。

「10月も、札幌の中古住宅の価格は、上昇傾向継続中」

 

<首都圏の10月市場 中古住宅成約数はなんと、レインズ発足以来 最高!!>

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首都圏の中古住宅市場は、日本の不動産市場動向の指標の一つとして、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の一都三県を首都圏として、市場動向の概略を、毎月チェックしています。

中古マンションの成約件数は前年比+31.2%と大幅増となっています。1990年5月のレインズ発足以来、最大の数字となっています。中古戸建住宅はなんと前年比∔41.8%となっており、これもレインズ発足以来の記録更新となっています。

こうした成約数の増加は、札幌の動向と同様に、昨年の消費税増税が影響しているのは間違いないでしょう。

しかし、コロナ禍の影響が、懸念されたように需要に表れておらず、むしろ成約数の増加がみられること、ましてや価格についても下落傾向は見られないことについては、他にも仮説を立てる必要がありそうです。

 

 

<景気・生活不安が、持ち家志向を後押し?>

中古住宅市場においては、札幌も首都圏も、価格の急落はここまで起きておらず、需要も堅調に推移してきています。

しかし、新築の分譲住宅は、昨年の11月以降明らかに減少しています。

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この新設市場と中古住宅市場の2つの統計から考えられる筆者の仮説は以下の通りです。

リーマンショックから回復傾向にあった土地・建物の価格は、東日本大震災やその他の天災の復興需要やオリパラ需要・タワーマンション人気による建設費の高騰と相まって新設のマンションや戸建ての供給を制限するほどに上昇し、供給が制限されることで更なる価格の高騰を生むというスパイラルな価格上昇モデルを構築していた。

②新築住宅の価格高騰により、比較的低価格の中古住宅市場が、政策誘導もあり、またリフォーム・リノベーション市場の開拓もあり、活性化して価格上昇を続けながら一般化していた。

③不動産投資ブームもあり、賃貸住宅市場も広がり活性化していた。

④しかし、コロナ禍の影響が大きくなり、家賃が払えない、老齢化で居住先が確保できない、などの将来の不安が増した。

⑤もともと自宅を賃貸するか購入するかという判断ができる、比較的属性の高い層が、将来の収入減に備えての資産として、もしくは住宅コストの低減策としての住宅の購入を、真剣に考えるようになった。

⑥新築市場に比べてお手頃価格である中古市場で現在の金利水準であれば、賃貸の家賃よりもむしろ住宅コストも下がる。本年中は、住宅ローン控除の優遇措置もあるので買い時だという判断もある。

⑦収入減・失業などのリスクが増したので、住宅ローンの審査が通るうちにローンを組もうという動きも増えている。

 

以上のような思考パターンで、中古住宅市場が活性化しているのではないかと思われます。そう考えると、今後もうしばらくは、実需といわれる実際に住むことを目的にした中古住宅の購入は、取引件数も増えるため、価格も堅調に推移するのではないでしょうか。

 

一方で、不景気から持ち家を手放したり、少子老齢化による世帯の人数低下により、賃貸需要数はさほど減少しないのではないかと思われます。ただし賃借に支払える住宅コストは不景気により低下していくことが予測されます。持ち家層と賃貸層は二極分化が進む可能性があります。この点についてはもう少し論点を整理して、改めてまとめてみたいと思います。

 

 

以上