さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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【媒介契約の3種類、知っておいて損はないかも】

今日(5月27日)の札幌は、朝から小雨が降っていて、ちょっぴり肌寒いお天気でした。昼過ぎにはなんとか雨もあがり、銀行に行く用事があったので、ついでに徒歩でいつものお散歩。雨がまた降るようだったらバスで帰ろうと悲壮な覚悟を決めていたのですが、帰るころには青空が出ていました。

雨上がりにはつい歌ってしまう鼻歌があります。私の歳の頃合いとそのシチュエーションから、曲の題名は、「雨上がりの夜空に」

だと思った方はまだまだ修行が足りません。もちろん名曲ですが。

私は、元祖根暗を誇る「子供部屋おじさん」です。「雨も上がったことだし」で始まる中島みゆきの名曲「おまえの家」を口ずさむに決まってるじゃないですか。

 

 札幌市の本日のコロナの新規感染者は1名、前日に発表された方のご家族のようです。感染拡大による嵐も早くやんで、晴ればれとした毎日を送りたいものです。

 

<不動産屋へ仲介を依頼する=「媒介契約」について>

さて、以前「囲い込み」についてご紹介させて頂きました。

「媒介契約」についても簡単に説明しています。

「不動産屋は、不動産の売買や賃貸を物件を紹介して条件を整えて契約を締結させる業務を行います。宅建業法では、こうした業務を「媒介」といい、その報酬を「媒介報酬」といいます。」

「不動産屋は媒介の依頼を受けると依頼主と媒介契約を結び宅建業法で定められた事項を明記した契約書を交付しなければなりません。これを「媒介契約書」といいます。」

「媒介契約には、依頼主が他の不動産屋に媒介を並列して依頼できる一般媒介契約と、依頼できない専任、専属専任の3種類の媒介契約があります。」

 

そこで、今回はもう少し詳細に説明していきましょう。

 

<媒介契約制度の趣旨>

昭和50年代の前半までは、仲介を依頼する依頼者と不動産屋の間では、仲介についての契約書を取り交わすということがほとんど行われていなかったこともあり、報酬や不動産屋の責任や義務といった点でのトラブルが後を絶たなかったといわれています。そこで昭和55年(1980年)の宅建業法の改正によって、媒介契約制度が創設されています。

媒介契約制度の主要な内容は、以下の2点です。

契約書面を交付しなければならないとしたこと

標準媒介契約約款を制定し、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」3種類を明示したこと

国土交通省では、宅建業法の「解釈・運用の考え方」として、不動産屋は依頼者に対して、不動産取引の概要や3種類の媒介契約の特色や相違点などについて、書面を交付して説明すること、媒介業務の内容や報酬についても事前に依頼者に周知し合意を得ることの徹底を指導しています。

 

<媒介契約の3種類 その特色と相違点>

媒介契約は、以下の3種類に分類されます。

(1)一般媒介契約:依頼主が他の不動産屋にも媒介を依頼できる

(2)専任媒介契約:他の不動産屋には媒介を依頼できない

(3)専属専任媒介契約:依頼者が他の不動産屋に媒介を依頼できないだけではなく、依頼者が自ら見つけてきた買主でも直接売買契約を結ぶこと(自己発見取引)を禁じている

 

契約の特色としては、

専属専任 > 専任 > 一般

の順番で、依頼主は、不動産屋の選択について契約に拘束されることになります。

不動産屋は、その対価として依頼主に対する業務の義務が増えることになっています。

3類型の内容を表にまとめると以下の通りとなります。

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 <どの媒介契約を選べば良いのでしょう?>

さて、3種類の媒介契約ですが、依頼者はどんな場合にどの種類の媒介契約を選べばよいのでしょうか。

この手のコラムにお決まりのセリフですが、答えは「ケース・バイ・ケース」です。

まあ、それで終わってしまうとちょっと不親切ですからもう少し続けます。

 

一般的には、不動産屋は専任媒介、あるいは専属専任媒介契約を結びたがると思ってよいでしょう。他の不動産会社に依頼されることは少なくとも3か月間は無い、成約すれば少なくとも売主からは手数料が見込めますから、広告を打ち、営業経費をかけても、他の会社に契約を取られることなく、経費を回収できる可能性が高いわけです。頑張って売主を見つけ契約を成立させようと一所懸命に努力をすることになります。依頼主にとっても、3ヵ月経っても結果が出なければ違う会社と契約することができます。

できるだけ早く売却をしたい依頼主、信頼できる不動産屋とお付き合いがある依頼主は、専任媒介あるいは専属専任媒介契約を結んだ方が良いと思われます。

 

 一方で、不動産屋にとっては、一般媒介契約は、どうしても優先順位・モチベーションが下がります。いろんな業者が物件を取り扱えるからといって、さほど競争原理は働きません。買主側は、売主側が一般か専任かは関係なく一所懸命物件を探しています。しかし売主側は、一所懸命販売努力をしていても成約寸前で他の業者が成約してしまえば不動産屋には時間も経費も回収できません媒介報酬は成功報酬と定められているからです。

しかも、広告をするときには、不動産屋は、広告物件が売主なのか代理なのか媒介なのかの取引態様を明示する義務があります。つまり一般媒介契約の物件を広告宣伝するときには、宣伝経費をかけて「この物件は他の不動産屋もウチとは別に依頼者と直接契約できる物件ですよー」と同業者にわざわざ教えてあげている、という側面もあります。

不動産屋にとってみれば、預かればすぐ成約ができるような手間いらずの立地・価格条件の優良物件でなければ、あまり一般媒介契約をするメリットは無いといえるでしょう。

したがって一般媒介契約であれば、自社のHPにしか掲載しないとか、「業者取り扱いおことわり」といった「囲い込み」を誘発しやすい物件とされてしまいます。専任契約や専属専任契約レインズに登録しなければなりませんが、そうなると囲い込みが難しいので、中には、あえて一般媒介契約として「自社物件」「非公開物件」として取り扱う業者もありますまあ、購入する側も「非公開物件」というと、なにやらお得な物件、良い物件という「神話」「おとぎ話」を信じている業界ですから、そうした手口も成り立つのですが。

大手業者に任せた方が安心だが、知人に紹介された地元の業者も断れない、とか、逆のパターンで、最初から複数の不動産屋に依頼しなければいけない事情がある場合には、無理に絞ったりせず一般媒介契約を選ぶ、というくらいで良いと思います。別に私が不動産屋だからポジション・トークをしているわけではないですよ。一般媒介契約には売主側にもさほどメリットはない、というのが真実だと信じています。

 

以上