さっぽろの不動産屋さん ろんたいの備忘録

札幌で細々と不動産屋を営むおっさんの四方山話です。

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新型コロナ時代 札幌不動産市場の現況

<札幌不動産市場動向 新型コロナ以前は好調>

ここ最近、札幌の不動産市場は、旺盛なインバウンドを背景にホテル・商業施設・オフィスの需要増によって商業圏の地価・物件が先行して上昇し、それに伴い地下鉄・路面電車、JR等の基幹交通の駅・停留所周辺の商業施設・マンション需要が促され、更に郊外の住宅地の開発につながるという好循環、いわゆる正のスパイラルの中で活況を呈してきていました。

本年(2020年)3月に発表された地価公示価格は、流石に1991年のバブル期の絶頂期のレベルは望むべくもありませんが、商業地は2013年から8年連続の上昇、住宅地も2014年から7年連続の上昇となっていました。

 

*図・上昇率等は「札幌市地価公示概要より」

http://www.city.sapporo.jp/keikaku/chika/documents/r2tikakouzigaiyou.pdf

 

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 2020年は、札幌市全体で前年比8%という高い上昇率となっています。住宅地は前年比7.1%の上昇となり、老齢化・人口減少が問題とされる南区でさえ前年比2.1%の上昇となっており、全区で前年を上回る上昇率となっています。

商業地区の上昇は10.2%と顕著であり、札幌市全体の上昇を支えていることが分かります。前年から10%を超える上昇率であった中央区・北区・白石区に加え、厚別区でも13.2%と目覚ましい上昇率を示しています。

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ちなみに、札幌市の2020年の最高公示価格は、520万円/㎡です。1m四方という大人が寝そべることもできないような土地の評価が520万円ということです。坪あたり約1719万円の計算になります。札幌の平均的な戸建てが60坪の敷地だとして、そうした家を建てるとすると、土地の原価だけで10億3千万円の豪邸の出来上がりです。なんだか恐ろしくなりますね。場所は、札幌市南1条西4丁目1番1外、皆さんおなじみの4丁目プラザが建っています。あのビルも老朽化が進んでいますが、これだけ地価が高いと再開発をまとめるのも一筋縄ではいかないでしょう。地権者をまとめる交渉の記録で小説が書けるかもしれません。

しかし、そんな正のスパイラルを描き順調に成長していた札幌の不動産市場も、2020年に入ってからの新型コロナウィルス感染症の拡大で一変することになりました。

 

<新型コロナウィルス感染症の札幌の状況>

◆対策

2020年1月28日北海道で初めての新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「新型コロナ」という)の患者が初めて、北海道で確認されました。北海道では「北海道感染症危機対策本部」が設置され、感染症の拡大対策が実施されています。

北海道および札幌市の感染症拡大対策の概要は以下の通りです。

*ご参照:新型コロナウイルス感染症について | 総合政策部知事室広報広聴課 

2月28日:鈴木直道北海道知事による「緊急事態宣言」

      期間:2月28日~3月19日

      内容:公共施設(図書館、体育館等)の休館

         学校の休校

         三密(密閉・密集・密接)行動の回避要請

         週末の外出自粛要請          等

3月19日:「緊急事態宣言」の終了

4月12日:北海道札幌市緊急共同宣言

      期間:4月12日~5月6日

      内容:1.札幌市内における接触機会の低減

         2.繁華街の接客を伴う飲食店等への外出自粛

         3.緊急事態宣言地域との往来自粛

         4.学校及び公共施設の休業・休館 (4月14日~5月6日)

         5.医療提供体制の充実・強化

         6.道内経済への支援強化  

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5月4日:緊急事態措置の5月31日までの延長

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◆札幌の感染状況

札幌の感染者の状況は、札幌市のホームページで詳細を確認することができます。

新型コロナウイルス感染症の市内発生状況/札幌市

この原稿を書いているのは5月5日ですが、昨日の5月4日時点で、札幌市の感染者数累計は533人、志望者累計は17人です。

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4月27日から5月4日まで、8日間連続で20人を超える感染者数が報告されています。感染者の増加もさることながら、高齢者向けのグループホームや病院でのいわゆるクラスター感染が目立つ一方で、徐々に濃厚接触者以外の経路不明の感染者が増えていることが特徴的です。残念ながら、感染の沈静化の兆しは未だ見えてこない状況といえるでしょう。少なくとも札幌市においては、厳格な行動の自粛要請は継続するものと思われます。

 

<札幌の不動産市場の現況>

元々、札幌の不動産市場は賃貸も売買も、年明けの1月から2月の初旬までは雪深く寒さも厳しいことから、内覧や現況視察の引き合いも少なく閑散としているのが常です。賃貸借契約では、札幌の古い慣習から、借主が冬季間に解約しようとする場合には1カ月分程度の家賃相当額を違約金として差し入れることとする「冬季違約金」の特約を未だに採用する大家さんや管理会社が今でも結構あるくらいです。

したがって1月くらいに新型コロナが話題になり始めた時期には、同業者間でも「コロナだろうが無かろうが、どうせ暇だよね」と軽口を叩いている状況でした。

1月末から2月の札幌雪祭りの時期になると、4月の新入学や就職に向けて、不動産市場、特に賃貸市場が繁忙期に入ります。今年の2月は、降雪が少なめであったこともあり案内や内覧も比較的スムーズに手配ができ、例年以上に堅調に申込・成約ができたのではないでしょうか。

しかし、2月28日に鈴木知事による「緊急事態宣言」が出てから、急速に不動産市場が冷え込んできました。特に3月に入り、学校の休校や外出・外食の自粛が求められたこと、同時期に世界各国での感染拡大が深刻化してマスコミでの報道が過熱したこと、により、経済への影響がより身近になってきたことが原因だと思われます。申込や契約のキャンセルなども多くみられるようになりました。事情を聞くと、内示や内定の取り消しなどもありました。また今後の収入の見通しが立たなくなりそう、という理由の方もいらっしゃいました。

外食の自粛要請により飲食店の休業や営業時間の短縮も多くなり、大家さんやテナント管理会社に対して、賃借料の減免要求も次第に多くみられるようになりました。3月下旬には、いち早くオフィスビル・ソシアルビル、マンションなどの自社物件などを管理する地場の大手管理会社(仮にK社としましょう)が、希望のテナントには賃貸料の半額の後倒し徴収を認めると発表し、北海道新聞にも掲載され話題となりました。

4月に入ると、賃貸も売買もパタッと一般のホームズやアットホームといったポータルサイトからの反響はなくなってしまいました。同業者からの情報交換で食いつなぐ日々です。そこへ4月12日からは緊急共同宣言です。とどめでしたね。内覧で狭い車に同乗することもお客様は嫌がるようになりました。

M井リアルテイやT急リバブルといった大手の業者も、時短営業や在宅営業のご時世です。飲食店チェーンのカリスマオーナーが壊滅的な採算悪化のために家賃の減免運動をしなくてはいけない状況となりました。インテリアやエクステリアの設備や部材、職人の手配もままならず、新設もリフォームも完成の目途をつけることが困難な状況が続いています。

多くの不動産投資家たちは、株価や原油価格の暴落や家賃低下、そして本業不振で困窮して不動産を投げ売りしなければならない恐怖と戦っています。そうした恐怖を抱えながら、一方で堪え切れなくなった他のオーナーが投げ売りした資産を捨て値で購入できないかと手ぐすね引いて待っているのです。まさにチキンレースの態、とは言い過ぎでしょうか。

いずれにせよ、売買も賃貸も、実需も事業用物件も、今はこの先の大混乱を前に非常に静かなマーケットになっていると言えます。正直、4月はじたばたする方が無駄に思えました。

不動産会社の多くは3月~4月初頭の繁忙期のおかげで内部留保は多少はあるかもしれません。急に路頭に迷うことはなさそうです。しかし、今後こうした不動産市場で状況をタイムリーに分析し把握しなければ、このいつまで続くかもしれない閑散期を乗り越える不動産屋さんにはなれないのではないでしょうか。

次回ブログは、こうした現況を踏まえた将来予測なんかをしてみようかと思います。